健太、乗馬クラブからの帰り道。
アパートへの最寄り駅の階段を降りてから、
行きつけのホルモン屋に寄った。
仕事や乗馬でうまくいかない時、ちょっと考え事をしよう
…いや、単に呑み食いしたいだけ、ひとりで。寄る店。
濛々と煙が立ち込める中、丸椅子に座ると、おばちゃんが。
「いつものね?」って。
いつもの…とは、ホルモン盛り合わせ(ニンニク増し)と
いつものなかのいつもの吞みモノ『焼酎Wのビール割』
焼酎にビールを入れることを、ビールで割るというのか?どうか?
アッシから言わせれば、『ホッピーの高級版』ですな。
「今日のホルモン盛り合わせは、レバとタンモトとハツね、いい?」って、
おばちゃんが、再び。
おばちゃんっていっても、健太の好みだから、イヤも応も、盛り合わせに対しても、ないし。
七輪に載せた焼き網を通して、煙がもうもうと。
コロナなんか関係なかったから(おばちゃんの主観的に)テーブル上の排煙設備とか全くないんですな。
煙を通して遠くを見ながら、でも目の前の『いつもの』をグイグイっと呑んで、レバを焼き網に載せる。
じゅ~ッ 煙煙煙
「あの夢はナンだったんだろぅ?」健太は思いだしながら、レバを10秒後にひっくり返し、
ひっくり返されたレバがジュッとジュと2回いってから、ニンニクダレにつけて、そして口に運んだ。
レバをかみしめながら「うん、レバは焼かないに限る」、、、おばちゃんが聞いたら、卒倒しそうな言葉だ。
「夢で、オレは憧れのケンタウロスになった。でも、最初は楽しかったけど、最終的には全然つまらんかったなぁ、、、
なぜだかわからんが、今でもバーに引掛けた左足の指先が、ズキズキするし、、、
あれ?オレの左足って、ケンタウロスのナニ肢なんだろう?」
今度は、タンモトを焼き網に載せた。タンモトは牛タンと違いリーズナブルで、しかも牛タンに負けず劣らず旨い。
このホルモン屋の醍醐味のヒトツだと、健太は思っている。でも、この際そんなことは、どーでもいい。
そして、ハツも載せた。
「ケンタウロスって、ハツ…もとい『心臓』はいくつあるんだろう?ふたつか?だって、そー見えるよなぁ?
レバは?シマチョウは?循環器系はどーなっているんだ?消化系の器官はよっぽど長いんだろーなーッ!!!
お尻拭くの、どうするのかなぁ?(昨日の淑女ケンタウロスとかは?、、、さらに遠い目になる)
…いや、ちょっと待てよ、神経系統はどーなっているんだ?!」
ハツとタンモトを交互にニンニクダレにつけては口に入れ、噛み応えのあるモノをグニグニ噛みながら考えた。
そして、ハツを噛みながら、ハッ!と気づいた。
気づいたときに箸をバシッと振り下ろしたので、ニンニクダレを入れた皿がはじけ飛んだ。
おばちゃんが寄ってきた、健太は悟った修行者の顔をしていた。
おばちゃんがズボンに沁みついたニンニクダレを一生懸命おしぼりで拭いてくれているのにも気付かず。
「ケンタウロスの神経系統は1系統なんだッ!オレの頭脳からケンタウロスの五体四肢の末端まで、一直線に!
「乗馬は違うんだッ オレの頭脳から発せられた信号はオレの手足五体を通じて、
そして馬具から馬体を通して馬の頭脳に働きかける、、、
そして、信号をキャッチした馬の頭脳が、ナニをどうして欲しいかを理解し、
そのライダーのリクエストを受け入れ自ら実施しようと考えたら、己の五体四肢に指令を発するんだッ!」
「オレは、馬の頭脳に働きかけるのを忘れていた、ただただ、馬の肢を直接的に動かしたかっただけなんだ。
馬の後肢に働きかけるために外方脚を引く?じゃないんだよなぁ~ッ!『馬の頭に』なんだよなぁ~☆
馬とのコミュニケーション、難しいけど、、、思うようにならなくて落ち込むけど、、、
馬とつながった、コミュニケーションとれたと思った時はHAPPYな気分になれるんだッ
これが乗馬の面白さなんだよなぁ~ッ、、、『人馬一心体』なんだよなぁ~♡」
「健太さん、レバが焦げてるワョッ!」
馬との事なんかよりもっと重要な?大事件を知らせるおばちゃんの声が背後でした。
健太は振り返り、ほほ笑んだ。
了
(お話と映像は全く関係ありません)




